人間の瞳を例に見ていきましょう。

人間の瞳は、10秒に1回程度の割合で瞬きをします。そのたびに瞳の表面に水が補給されます。

水が補給された表面を素早く油が濡れ広がることでドライアイを防ぐ役目をします。

塗料は被塗物表面にしっかりとくっつくことが必要です。そのためには瞳の水面に油が素早く濡れてゆくような塗料として、まず被塗物表面に濡れ広がることが大切になるのです。

被塗物表面に、金属が残っていたり、プラスチックならば油や離型剤が残っていたり、木材ならば毛羽が残っているとしたら、濡れが悪くなったり付着障害が起こってしまいます。美観不足になることもあるでしょう。

そこで、被塗物表面を塗装できる状態にすること、すなわち、塗料が均一に塗れ広がるように調整することが、塗装の第一歩となります。この作業を素地調整と呼びます。

大型船の素地調整ならば、塗替え前には被塗物の隅々まで鋼球を高速で叩きつけて錆や海洋生物などを除去します。サビ取り作業をケレンと呼びますが、クリーンがなまってケレンになったとそうです。

車やプレコートメタルの素地調整にはりん酸亜鉛化成処理と呼ばれる表面処理が行われます。

表面処理液中に鋼板を浸せきすると、鉄の一部は処理液中に溶けて、酸化・還元反応で化成皮膜が形成、熟成されて、鉄表面は細かく緻密な結晶が被覆されます。この処理で、塗料の付着性と防錆性が向上します。

木材の素地調整では毛羽を除去するために水引き研磨を行います。温水で表面を湿られて、乾燥させた後に毛羽立った所を逆目から研磨して取り去っていきます。

この他にも、加工時の刃物による鉄汚染の除去や漂白、打痕の修復など、他の素材にはない素地調整作業があります。